大学における意思決定に必要な情報の入手-外部機関に頼むという手段-(私立大学の例)

中長期計画の策定や広報、各種委員会委員など、大学経営にも関わっている知人の大学教員の方から、次のようなことを時折耳にします。

 

「学生募集策や教育内容の改善のために、これからは○○を特色にして学生募集やカリキュラムの整備に取り組もうと職員や教員に提案すると、△△課の職員(または教員)から『そんなことをしたら学生が集まらなくなる。無理だ。』、『他の大学はそれでうまくいってない』、『失敗は目に見えてる』といった抵抗を受ける。面倒だからか、やる気がないからか分からないが、いくら口で言ってもダメなんだ。本当に危機的な状況になってからでないと、改革は進めらないのかもしれない。」

 

そうした声に対して、(ありきたりな返事ではありますが)私は、

「現状はどうなっているのか、それらの取り組みや改革が有効なのかを裏付け、意思決定の材料となるエビデンスを集めて、それらも併せて見せながら提案していってはどうでしょう?」

と返します。

 

学内にIR担当の人員や部署が存在するのであれば、そうした人や部署に情報収集や分析を依頼することもできるでしょう。しかし、その大学にはまだ「IRer」としての仕事ができる職員や、IR機能を持つ部署が存在しないとのことです。

 

そうなると、まず思い浮かぶ策としては、自分や内部の協力者を中心にデータを集め、分析し、意思決定に必要な情報を用意していくということが考えられますが、元々の自分の仕事に時間を取られたり、専門的にその仕事をしているわけではなかったり、または組織の縦割り文化があったり、入手可能なデータがどこにあるかわからなかったり…といった事情で集められるデータや作業時間には限界があると思います。

 

このようなときには、膨大で多種多様なデータを持つ外部機関を頼るのも一つの手です。その中の一つの手段として、私立学校のデータの入手であれば、日本私立学校振興・共済事業団の情報提供システムや提供依頼を活用するという手があります。

 

大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校、中学校、小学校を設置している私立学校法人であれば、私学事業団が左記の学校法人向けに提供している私学情報提供システムを利用して、私学事業団が調査で集めているデータの一部を入手することができます。

地域や規模など様々な条件を付けて、学生数や財務等のデータの集計値等を入手することができます*1

 

ただし、法人内で使用可能なアカウントの数は限られているので、使用に際しては学内で調整が必要な場合もあるかもしれません。また、学校法人によっては、役員以上の一部の者しか存在を知らないというケースがあるかもしれません。

 

まずは上記システム内で必要なデータを揃えられるか試すことになると思いますが、こちらのシステムだけでは入手できない条件のデータを求めるのであれば、情報提供依頼書を提出し、指定の条件に基づいたデータを依頼することもできます*2

例えば、特定地域の、特定の規模以下の、看護系や国際系の学部や学科の志願状況などの量的なデータや、留学を必修としている大学の取り組み一覧等の質的なデータなど、必要な条件に応じたデータを依頼することも可能だと思います。

 

ただし、広報誌やマニュアル等にも一部記載がありますが、3点ほど注意点があります。

1つ目は、提供依頼には原則として理事レベルの同意が必要なことです(これについては、不安な点がある場合は問合せしてみるとよいかもしれません)。

2つ目は、他の法人や学校の個別データの入手や、個別データを特定される恐れのある条件での情報の提供には応じてもらえないことです。

3つ目は、高度な条件付や統計的アプローチに基づいた提供依頼には応じてもらえない可能性があることです。この点については、高度専門的なスキルを持つ大学等の「IRer」の方にとっては残念かもしれません。

 

予め知っている限りで注意点を書きましたが、やはり自分達の入手可能なデータや頭数だけでは、どうしても情報量や人手が足りなくなるケースが発生することもあると思います。

そのようなときには、外部機関の手を借りることも検討してみてはいかがでしょうか。

 

※このブログの内容は個人的意見や見解です。所属組織とは一切関係がありません。